Live Q&A
それ他社でもできるよねへの整理
「他社でもできることを、あえてこの業界・この会社でやる意味は何か」という問いは、SIerやIT業界を志望する就活生が必ず一度はぶつかる壁である。金融系IT子会社の評価、SIerのプロジェクトマネージャーの汎用性、ヘルスケア×ITのような領域を志望動機にする際の説得力など、Utsuさんはそれぞれの相談に対して、業界構造や制度的な前提を踏まえた上で率直に答えている。ふわっとした憧れではなく、何がしたいのかという核があるかどうかが繰り返し問われている。
Q. 農中情報と方正、どちらの方がITスキルが身につきますか。
A. Utsuさんは、方正についてはよくわからないと前置きしつつ、ユーザー系子会社にはあまり行かない方がいいと指摘する。単なる契約担当・保守業務になってしまい、競争力がゼロになってしまうためだと語る。
Q. SIerのプロジェクトマネージャーは他業界の同職種にも応用が利きますか?
A. Utsuさんは、SIerのプロジェクトマネージャーとして培った経験が他業界で通用するケースが全くないわけではないと語る。ただし、SIerでプロジェクトマネージャーになれるのは40歳前後であり、そこから他業界へ移るとなると年齢的なハードルも大きいと指摘する。楽天など他業界に転じた例もあるにはあったが、業界・職種はすでに細分化が進んでおり、単純に応用が利く時代ではなくなってきているとも述べる。さらにUtsuさんは、ある職種や業界が東大生など高学歴層に人気になり始めたら、それは歴史的に見てその分野が「オワコン化」しつつあるサインだとし、コンサルなどもその例に当てはまると答える。
Q. 曲がった性根を叩き直すため、完全実力主義のIT企業で営業から始めようと思います
A. Utsuさんは、それは自分が人生の目的論として語ったこととは違うと指摘する。そのうえで、そもそも「完全実力主義のIT企業」など世の中には存在しないと断言する。
Q. SIer企業への就活で、ヘルスケア×IT・医療×ITの分野なら原体験を交えて志望動機が書けそうですが、多くのSIer企業はヘルスケア領域を主戦場としておらず金融領域などがメインです。マッチ度が低くても、弱小領域を前面に出した志望動機にしていいのでしょうか?
A. Utsuさんは、ヘルスケア分野を志望動機に据えるなら、その業界特有の構造的な前提を理解しているかが問われると指摘する。個人情報保護法の観点から、医療データは医師会レベルでしか共有が難しく、例えば品川区医師会のようにデータを保有していても、その上に組織の長が存在するためデータ共有が容易ではないと語る。こうした事情から、日本のヘルスケア領域は国立がんセンターのような疾病単位の取り組みでしか進めにくいのが実情だとUtsuさんは説明する。その上で、こうした前提を踏まえてヘルスケアや医療について語っているのか、当然調べた上で志望動機を組み立てているのかが問われる、とUtsuさんは答える。
Q. SIer業界で「入っていい会社」と評価された複数社から内定をもらった場合、選ぶ基準はありますか?
A. Utsuさんは、評価基準を満たして「入っていい会社」とされているのであれば、その中からは好きに選べばよいと語る。SIerは金銭的な条件がどこも似たり寄ったりであり、そもそも滑り止めの位置づけに過ぎないと指摘する。本番となる勝負は別のところにあるとし、自社開発企業のエンジニアになりたいのであれば最初からそちらを目指すべきであり、新卒でわざわざSIerに入る必要はないと答える。
Q. 日本総合研究所(JRI)とSCSKから内定をもらった26卒就活生。「ITで金融を便利にしたい」という軸で就活し、JRIから内定を得たが、Utsuさんが「金融系IT子会社はおすすめしない」と話しているのを知り、他社も受けたがSCSKからしか内定が出なかった。
A. Utsuさんは、金融系IT子会社(JRI、日本総研など)をおすすめしない理由について、それらの企業が運用ベースの業務中心になっている点にあると語る。その上で、質問者がJRIに入社したいという意志があるのであれば、それで良いのではないかと答える。
Utsuさんは、基本的にこうした企業を良くないと言い続けているが、それはこれから世の中をどんどん変えていきたいと強く思っている人に向けて言っていることであり、ふわふわした気持ちの人はUtsuさんの話など聞かない方がいいと指摘する。Utsuさん自身は自分が生きてきた爪痕を残したいタイプの人間であり、そうでないタイプの人はUtsuさんに相談しない方がいいと述べる。そして、金融系IT子会社の業務については率直に「クソみたいな業務だ」と述べ、何のために生まれてきたのか分からないような仕事ばかりだと感じている、と語る。
Q. 基幹システム導入による業務効率化・利益向上を仕事にしたいと考えていたが、ある企業の面接で「複合機の営業でも同じことができる」と言われ、どちらに進むべきか悩んでいます。
A. Utsuさんは、率直に「わからない」と答え、業務効率化・利益向上への貢献自体は人生の目的ではないのではないかと指摘する。人生における本当の目的が定まっていれば、そこから進むべき方向を考える別の判断軸が自然と生まれてくるかもしれない、と語る。
Q. 「技術の力で、働く人の問題解決に貢献する」という目的を掲げているが、これ以上絞り込めない。多くの部門を抱える技術コンサル企業を志望しているが、まだ目的の深掘りが足りないのでしょうか。
A. 深掘りが足りないかという点について、Utsuさんは、新聞を読んでいない、手段が分かっていない、会社や社会の仕組みが分かっていないのではないかと指摘する。
またUtsuさんは、質問文にあった「ADHDの気質がある」という自己申告については強い口調で釘を刺す。実際にうつ病などの精神的な病を抱えた同僚を何人も亡くした経験があり、その中で本当に助けが必要な人が見過ごされてしまう背景には、なんちゃってのレベルで安易に病名や気質を口にする人が多いことがあると語る。周囲が「またか」と流してしまい、結果として本当に助けが必要な人に社会の目が向かなくなるとし、こうした軽い自己申告を二度と言わないようにと強く求めている。
Q. 代理店業務をしているが、将来的に教育に関わる事業(学びの場を変える取り組み)をしたい。企業とNPOどちらで立ち上げる方がハードルが低いか?
A. Utsuさんは、質問がHow(企業かNPOか)にとらわれてしまっていると指摘する。企業でもNPOでも法人格自体はどちらでも構わず、重要なのはWhat、つまり「何をやりたいのか」が明確になっているかどうかだと語る。何をやりたいかが定まって初めて、それに合った適切な法人格を選ぶ議論ができるのであり、そこがまだ緩いからこそ、法人格の選択という枝葉の話に迷ってしまうのだとUtsuさんは答える。
Q. 今後10年でAIはどこまで人の仕事を代替しますか?
A. Utsuさんは、社労士のような仕事はAIに代替されていくと指摘する。システムの価格が下がっており、スマートHRのような無料サービスも登場していることをその根拠として挙げる。Utsuさん自身も社労士を使わず、自分の会社の手続きを年金事務所に直接行って済ませているという実例を紹介し、専門家を介さなくても対応できる領域が広がっていると語る。
Q. 情報系学部出身者は、IT・開発・研究以外にどのようにキャリアの選択肢を広げていけばよいか。
A. Utsuさんは、大きなソフト会社の中核には、コミュニケーションが得意でない天才的な技術者たちがいると指摘する。そうした人材とは対等に話が通じないことも多く、いずれは自分がそれらの技術を「使う側」に回る必要があると語る。だからこそ最初のキャリア選択の段階から、使う側に回るという意識を持って会社を選べるかどうかが重要だと述べる。「したい」と「できる」のバランスを考えたとき、「できるから」という安直な理由でIT・開発系の会社を選ぶのではなく、情報系学部で得た知識・スキルはあくまで一つの特技として位置づけて進路を選んだほうがよいとUtsuさんは答える。そのほうが、最終的に大きなことを考え、立案し、運営する側の人間としてスケールする仕事に就けるかどうかのスタート地点として良い、というのがUtsuさんの見解である。
「それ他社でもできるよね」に答えられない志望動機は、業界や会社の看板に頼っているだけだとUtsuさんは指摘する。